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ラグビー力③(松下という男)

2018/03/07

2018年卒業生の思い出は、
やはり松下という男です。

新生守山高校ラグビー部の経験者第1号
まだまだ、15人揃わず
横着で情に厚い生徒が多かった守山高校ラグビー部。

その中で部員がのどから手が出るほどほしい状況の中で守山高校に入ってきた生徒。
経験者が入ってくる。
松下も先輩たちの雰囲気を好み、入部。
とてもうれしかったっという記憶があります。

ところが、1年の2学期から学校中の噂になります。
こんなに勉強ができない奴はいない。課題も出さない。
おまけに反抗的。
先生たちは、口々に「こんな奴は、こんな奴は」
という雰囲気に。

1年の3月、彼の前には何百枚もの課題が積み上げられました。
たった1週間でこの枚数をやらなくてはいけない。
それだけでなく、多くのテストで7割以上をとれなくても進級できない。
そう突きつけられました。

私は「確かに、勉強できず態度も良くない。でもラグビーをやっている松下は、悪い奴には思えない。一つ上の先輩と同じように情に厚く、ちゃんと説明すれば人の気持ちがわかるし、空気も読める奴。救ってやらないと」
ラグビーで救ってやろうと。
そう思い、彼と毎日毎日、一緒に課題を行い、勉強をわかるまで、覚えるまで教えました。毎日、夜の9時10時まで勉強をさせました。学校だけでなく家にまで押しかけて、やらせました。時には深夜12時を超えるまで。もちろん、土日は1日中、彼と接しました。
朝6時に電話をかけ起こし、遅刻しないように昇降口で見張り。電話に出ないときは、家に押しかける。なんとか、進級させるために、まさに命がけで松下とは向き合いました。そんなある日、松下の母親から電話がありました。「先生、ありがとうございました。本人、もう無理だと言ってます。いろいろしていただいたの申し訳ありません。今、就職雑誌見て次の人生を考えています。」それに対して、私は「待ってください。とりあえず、お宅にお伺いします。」そして、私は家に入り、「ラグビーも人生も同じ。一番苦しい時にどれだけ頑張れるか。苦しいとき頑張れば、前は見えてくし、勝利をつかめる。だから、お前は今が人生の踏ん張りどころ。頑張って人生に勝とう」と説得し、就職雑誌を破り捨て、鉛筆を持たせ勉強をさせました。こんなことを何度も何度も繰り返し、3月の最終週、ようやく進級が決まりました。
そんな松下ですが、のど元過ぎれば熱さ忘れる、、、
2年になっても勉強もできず、態度もよろしくない。2年2学期の通知表は、惨憺たるものでした。相変わらず、先生からの評判は悪く、あるときある先生にチクリ、と言われたこともありました。苦しい言葉でした。が、ラグビーが、私を、松下を救ってくれたと思います。ラグビーのつながりはどんなつながりよりも強い。誰になんと言われようが、松下を救う。ラグビーに救われた自分だから。今度は、救ってやる番だ。こうして2年目の3月も毎日毎日、張り付いて課題をやらせたり、勉強を教えたり。少しでもミスをしたら、進級できない。毎日毎日、心臓が止まるかと思うぐらいです。ラグビーやっていなかったら耐えきれないだろうなぁ~と思いました。ここでもラグビーの力を感じました。こうして、なんとか3年に進級。
3年に入り、勉強が苦手な松下ですが、なんとか食らいつきます。
最後の最後も、いっぱい単位を落としましたが、1、2年の時とは違い、最小限に抑えます。
最小限に抑えたため、しっかり準備ができ、追試に合格。見事に卒業式を迎えることができました。
卒業が決まった日に、松下は私のところに来て
「けいじ、最後までありがとな」
とお礼をいいました。

「さいごまでありがとな」
たった10字。しかし、このたった10字には言葉では表現できないくらいの思いが込められていた。
生徒に「ごめなさい」「ありがとう」「おはようございます」やお手本のような文章を力で言わせることは簡単です。
でも、本当に心のこもった言葉を生徒に言わせるには、こんなに苦労しなければいけないんだ。
それを松下から、ラグビーから勉強させてもらった。
そんな松下に
「こちらこそありがとな」

3月1日の卒業式
松下の顔には、涙があふれていました。

その日の夜、校長に言われました。
「松下の涙、感動した。いろいろ言われて辛かったと思うが、今回は先生の勝ちだ!!」

最後に、2018年の卒業をしていく松下を含む部員たちへ

ラグビーのおかげで苦しいときに頑張れた、頑張らせれた。
人生の勝利者になるために、これからも苦しいときこそ前を向こう!!

卒業、おめでとう。
守山高校ラグビー部監督 中村 圭児

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